「新城マガジン」では、武蔵新城を多くの人に味わってもらいたいと、新城の人やお店を発信しています。多摩川を渡った川崎市、唯一通っている路線は南武線。なんだか懐かしくて肩の力が抜ける町です。運営:新城WORK
2020年の5月に、北口はってん会にオープンした「パンと焼き菓子のPapapapa-n!2」。新丸子にある1号店の評判もあり、オープンしてしばらくは開店前から行列になるほど話題になっていました。
ポップなカラーの看板やクロワッサンの形をした照明など、つい目を引く外観。店頭のショーケースには、名物のクロワッサンの他、個性的なパンが並んでいます。
今回はオーナーの神戸友輔(かんべゆうすけ)さんに、お話をお伺いしてきました。
製菓製パン学校で洋菓子を学び、パティシエとして約6年務めた後、パンの世界へ。パリ・フランス国内で16店舗、東京で2店舗展開する『メゾン・ランドゥメンヌ』で、看板商品であるクロワッサンの「トリエ(クロワッサンのチーフ職人の呼称)」を務めたほか、数々の有名店で修業を積み、独立。
長生きするお店にするために。
―――今日はよろしくお願いします!すでに常連でよく買いに行くのですが、いつ行っても悩んでしまいます(笑)全部で、約80種類もあるんですよね。
「はい、常時店頭に並んでいるのは35〜40種類程度ですが、季節商品や焼き菓子などを入れるとトータルそれくらいありますね。新商品は、本やレシピなど基本のものがある中で、材料を違う種類の小麦粉にしたり水を増やしたり、アレンジしています。あとは、もともと料理とかお菓子をやっていた経験を活かして、それらをパンと組み合わせることも結構ありますね。」
―――なるほど、それで個性的なパンが並んでいるんですね。なぜパティシエからパンの道を選ばれたんですか?
「ケーキや洋菓子って、特別なときとか2週間に一回くらいしか買わないと思うんですが、パンはもっと頻繁に食べるものなので、地域密着なお店にできそうだなと思ったんです。」
ーーー地域密着。
「商売としてお金を稼いでいくには、お店を続けていくことが大切だと思っていて。そのためには、流行に合わせて華やかな商品を並べてスタイリッシュなお店にするよりも、地域に根差して目の前のお客さんや時代に合わせて変化していく方が長生きできるんじゃないかなと。」
「なので、馴染みやすくて、いい感じにゆるくて、お客さんが入りやすいお店にするように心がけています。パン職人としてのこだわりは持ちつつも、お客さんに支持される道を選ぼうと。あとは、シンプルに地域密着の方が僕自身が楽しいですね。」
―――お店の雰囲気やホームページもほどよくゆるくて好きです。特にティザーサイトのカタカタは見入ってしまいました(笑)
「ホームページやティザーサイトは、以前シェアハウスで一緒に住んでいた友人がつくってくれました。こちらから細かく依頼せず、お任せしているんですが、Papapapa-n!の雰囲気とかをいい感じに表現してくれて。」
―――イラストもですか?
「このイラストは僕が書いてます(笑)あと、僕の妻が制作もの、ポップをつくってくれたり、建築の資格を持ってるのでお店のデザインとかをやってくれたりとか。あと、Papapapa-n!2だと妻の建築系の友人にもアーチのアイデアを考えていただいたり、狭いなりに色々工夫しました。」
―――神戸さんとPapapapa-n!の世界観を理解している周りの人たちの総力を結集して、できているんですね。あと、お店の外に飾ってあるクロワッサン型のライトが可愛いと思っていました。
「照明は照明屋さんにお願いしてつくっていただいたものです。ちなみに、店内のペンダントライトはなかなか既製品でいいものが見つからなかったので、minneで買いました。」
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今に活きている、町のお菓子屋さんでの経験。
―――製菓製パン学校に進学されたということは、高校生のときからパン屋さんになりたかったんですか?
「いえ、高校のときは国公立大学の経済学部に入りたかったんですが、落ちてしまって。もともと料理やお菓子づくりが好きだったので、製菓製パン学校に通うことにしました。」
―――経済学部!全然違いますね。
「はい、親にも驚かれました(笑)卒業後はパティシエを約6年、パン屋を約5年経験して、独立しました。前職は、パティシエのセカンドとして入ったんですが、クロワッサンが人気商品になったので、1日中クロワッサンばかりつくることになって。」
―――パティシエからパン職人になられて、葛藤はなかったんですか?
「色々ありましたが、パンの奥深さに惹かれました。天然酵母とか有名ですけど、パンって菌なので、その日の天気や湿度によって変化するんです。自分の思った通りにならないのが洋菓子とは異なって、面白いなと思ったんです。」
―――色々というと。
「専門学校のときは華やかなケーキ屋さんとかホテルに憧れてたんですよ。そういうところは人気なので落ちてしまって、町の洋菓子屋さんに就職しました。それに、町の洋菓子屋さんで働き始めた1、2年目は売り場に立つことも多くて、そのときは嫌だったんですけど、今思うとその経験をしてよかったと思っていますね。」
―――それはなぜでしょうか。
「ホテルの仕事って場所にもよりますが、マカロンを並べるだけ、皿に盛るだけとか、つくることが少ないんです。今では、直接お客さんを見たり接したりした経験が活きていると思います。」
―――先程お話していた、お客さんのニーズを汲み取って地域密着なお店にしていく、というところにもつながりますね。
「そうですね、お客さんが今何してほしいのかとか、どういう商品がほしいのかな、とか、そういうのは店頭に立ってお客さんと話して気づいたことが多いです。こういうパンが欲しいかなと思ってパンを作って、自分が思ったような反応が来たりすると楽しいですね。」
―――他に、お仕事される中でうれしいことってありますか?
「今は従業員が増えて、社員で4人、アルバイト7〜8人いるので、スタッフの成長がうれしいですね。期待以上にやってくれたりとか、新商品提案してくれたりとか。新丸子のお店を任せられなかったら、新城も出店できなかったですし。」
新城との偶然の出会い。
―――新丸子と武蔵新城と、中原区はもともとご縁があったんですか?
「いえ、ありませんでした。以前は練馬や大田区に住んでいて、六本木のお店に決まるときに武蔵小杉に住もうとなりまして。ただ家賃が高いので、新丸子や元住吉を歩いたりしたときに、いいなってなったんです。その後は、二子玉川のシェアハウスに住んだんですが、お店をやろうと思ったときに頭に浮かんだのが新丸子でした。」
「当時シェアハウスに一緒に住んでいた不動産屋の友人に頼んだら、すぐに話を持ってきてくれて。申込みが3とか4番目だったんですけど、そのオーナーの方が自分が前に務めていた六本木のパン屋さんのファンだったというご縁もあって、そこにオープンすることができました。」
―――すごい偶然!新丸子のどういうところが好きなんですか?
「下町っぽさや商店街の雰囲気ですね。がやがやしているお店もあれば、小杉の商業施設まで歩いていけたり、多摩川でお散歩できたり。自分もそのあたりに住んでいるんですが、子育てもしやすいなと思っています。商店街の方もいい方が多くて、地域に恵まれていますね。新城でも正面の灯台屋さんや隣の美容院の方によくしてもらっています。」
―――なぜ武蔵新城で2号店をオープンしようとなったのでしょうか?
「一号店を出したときは2号店は全然考えてなかったんです。その後ご縁で古い一軒家を使わないかというお話をいただいて、古民家カフェとかやろうかなと思っていたら、ちょうどメールで新城の居抜き物件が流れてきて。」
「実際に行ってみたら、新丸子のお店にはない『平釜』というハード系のパンも焼けるオーブンが備わっていたり、厨房機器がよかったんです。北口はってん会の通りを歩いたり、不動産屋さんに話を聞いたりして、よさそうだったのでトントン拍子で決めました(笑)」
「それに、ここに以前入っていたパン屋さんでは新丸子にあるSHIBACOFFEEさんのコーヒー豆を販売していて、Papapapa-n!でもオリジナルブレンドのコーヒーバックを作っていただいているので、不思議なつながりを感じています。SHIBACOFFEEの方に新城テラスやshinjo gekijoなど、素敵なお店があることは聞いていました。」
―――実際にお店を始められて、新城はどんな印象ですか?
「新城はたまに歩いたりチャリであちこち行ったりしているのですが、まぐろの専門店やチーズのmikotoさんがあったり、小さくておもしろいお店がたくさんあっていいですよね。あまり知られてないところが多いなと思います。」
―――2号店ならではの楽しみ方はありますか?
「ハード系のバゲットやペイザン、ロデヴなどのハード系がおすすめです。日曜と月曜は『焼き菓子なのだ』というお店で営業していて、店主の野田がつくる焼き菓子も美味しいので、ぜひ食べていただきたいです!」
―――ひとつの店舗で、曜日によって別のお店でやられている理由も気になってました。
「『なのだ』は出店を決めたときは、まだ考えていなかったんです。もともと週4日はパン屋として開けて、残りの日は貸そうかなと思っていたんですけど。野田ちゃんと3月くらいにごはんに行ったときがちょうど彼女が仕事をやめた一週間後くらいで、『うちで働いてみる?』って(笑)それもトントン拍子で決まりました。」
―――新城の出店など、一回決めたらそのまま行動に移されることが多いんですね!これからやりたいことはありますか?
「同じパン屋さんだけだと飽きられてしまうので、自転車でいける範囲くらいの中原区エリアで色々な業態をやりたいと思っています。例えば、カフェとかコーヒー屋、飲食店も面白そうですが全然関係ない業態で美容室も興味があります。Papapapa-n!の雰囲気を好きなお客さんが、別の用途で楽しめて、送客しあえるようなお店をやったら面白そうだなと思っていますね。」
編集後記
最近では、毎週買いに行っていまして、パンを選ぶことから楽しんでいます。クロワッサンを始め、『ナナナナッツ』『枝豆すもちー』『あんくりちー』をいただきましたが、どれもこれもおいしい!そして名前も愛らしい。今もひっきりなしにお客さんが来店しています。もちろん『焼き菓子なのだ』の焼き菓子もいただきました。『なのだ』も他ではあまり見かけないお菓子が並んでおり、私は外国のお菓子をいただきました。(名前を忘れてしまった…)
『Papapapa-n!2』の前を、毎日のランニングのときに通っていたので、毎回いつオープンするかと楽しみにしたり、近所に住む友人ともinstagramやホームページを見て、盛り上がったり。新しいお店ができると、町中でワクワク感を感じられたり、ちょっとした変化を見ることができたりするのも、町で暮らす楽しみのひとつだなと思いました。
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ライティング・撮影:とやまゆか/インタビュー:中村文香
※この記事は「新城マガジン」より転載しております。オリジナル記事が読みたい方はこちらからご覧下さい。