「新城マガジン」では、武蔵新城を多くの人に味わってもらいたいと、新城の人やお店を発信しています。多摩川を渡った川崎市、唯一通っている路線は南武線。なんだか懐かしくて肩の力が抜ける町です。運営:新城WORK
今回、ご紹介するのは、サンモール商店街にある「タイレストラン Maitai」さん。2020年3月には、川崎市の空き店舗活用アワードで大賞を受賞されました。
お店の前には、手作りの顔ハメパネルが置いてあり、看板の横にある大仏のロゴも可愛らしく、なんだかほっこりする外観です。
Maitaiを営む、古賀さんご夫婦にお話をお伺いしました。
俳優を目指して大阪から上京。タイ料理に限らず、日本料理や沖縄料理などさまざまなジャンルの飲食店で修業し、2018年の6月に明日香さんとMaitaiをオープン。
高校3年生のときから飲食店でアルバイトを始める。4年制の大学に入学したものの、飲食店での仕事が楽しくなり、2年生のときに自主退学。その後、タイ料理屋など複数のお店で働き、2012年に聖司さんと結婚、現在は2児の母。
フレンドリーな商店街で、フレンドリーなお店を。
―――おふたりはずっと飲食店で働かれていると思うんですが、お店をオープンすることにしたのは何かきっかけがあったんですか?
聖司さん:いや、すごい突発的だったよね。
明日香さん:そうそう、何も準備とかしてなくて(笑)私が産休から復帰するタイミングで、産休前に働いていたお店が閉店してしまって。同じ会社の別の店舗に戻るか自分たちでお店をやるか考えて、このままずっと会社に属して飲食店で働いていたら、2年に一度とかのペースで頻繁に転職するだろうなと思ったんです。
失敗してもいいから自分たちで好きなように一回やらないと気が済まない、だったらいつやっても変わらないから今やっちゃおうって、お店をやることにしました。
―――まさに勢い!なんですね。この物件はどのように見つけたんですか?
聖司さん:知り合いの不動産屋さんに、居抜きで商店街の路面店という条件で探してもらって、紹介してもらったのがここだったんです。その内見で初めて武蔵新城に来て、駅のまわりや商店街に活気を感じられたので、ほぼ即決でした。今はシャッター商店街が増えているのに、こんなに活気があるって素晴らしいですよね。
―――即決!
明日香さん:帰ってきて物件決めたって言われて、えぇ!って見に行って(笑)私も一見さんより地道に常連さんをたくさんつくっていく方が合っていると思っていたので、そういう地元の人たちで賑わうお店が多い様子を見て、気に入りました。
―――タイ料理屋さんにした理由は?
明日香さん:旦那は和食や沖縄料理など幅広くつくってきたので、正直何屋さんにでもなれたんですが、もともと私たちの働いていたお店がタイ料理屋だったのと、このあたりになかったので、タイ料理屋さんにしました。
―――周りに知っている人もいない中で、不安とかはなかったんですか?
聖司さん:最初は、1000ベロ※とか、地域のイベントにひたすら参加しましたね。それで、秀和さん、文さんたち※と出会って、すごい仲良くしてくれて。営業が終わってから、しょっちゅう飲み歩いてました。新しくきたMaitaiですって。
※1000ベロ:武蔵新城で年に3回行われている飲み歩きイベント
※秀和さん:武蔵新城の大家さん
※文さん:創ダイニング ばん菜のオーナー・サンモール商店会の副理事長
明日香さん:そうなんですよね、飲み歩いていると自然と知り合いができていって、みなさん仲良くしてくださって。何よりサンモールのみなさんのカジュアルさが、本当に居心地がいいんですよ。理事長さんも若いですし。イベントをやりたい、新しい何かやりたいって言うと、誰も反対しないどころか、喜んで乗っかってくださるんですよね。
聖司さん:ミーティングをやろうってなったらすぐ集まるし。いい意味で変わってるよね。
明日香さん:そう、私今まで色々な商店街でお店をやってきましたけど、サンモールみたいなフレンドリーな商店街って、なかなかないんですよ。
―――人が集まる場が好きなんですね。
明日香さん:そうですね、以前働いていたお店でも地域イベントを催すこともあって、そういう人が集まる場とかが好きなんです。前にうちでも芸人さんを呼んで大喜利イベントをやったり、料理教室をやったりしていました。
―――お店のデザインにもフレンドリーさがにじみでている気がします。
明日香さん:店内の絵はオープン当初に働いていたアルバイトの子が書いてくれました。設計やデザインは枠組みを大工さんにやってもらっただけで、ほぼ手作りです。何も決めずに、やりながら「ここ何色に塗る?ここどうする?」ってその場でつくっていきました。
会社に属してやるよりも、自分たちで全部やった方が楽だった。
―――ふたりでずっと一緒にお店をやってると喧嘩しそうだなって思ったんですけど、そのあたりはいかがですか?
明日香さん:いや、前と比べてストレスはかなり減りましたね。私ももうちょっと喧嘩すると思ってたんですけど、むしろ前職の同じ会社で違う店舗で働いているときの方が、毎日喧嘩してました。
―――すごく意外です。
明日香さん:今は行き先というか目指しているゴールは同じなので、何か言い合っても喧嘩にならないんですよ。それまでも同じ会社なので一緒のはずだったんですけど、会社だと色んな人が絡んでくるので、それが厄介だったのかな。
あと、細かい作業、お金の計算や確定申告とか、営業や仕込みも全部自分たちでやらなきゃいけないのは大変ではあるんですが、むしろ私たちにとっては全部自分たちでやる方が楽なんですよね。
―――大変なことが楽。
聖司さん:例えば、誰かが前日に仕込みしてなかったから、俺が今日めっちゃ忙しいってすごい嫌じゃないですか(笑)でも、今はそういうことはなくて、前日仕込みしていなかった自分を次の日の自分がカバーするしかない。だから、今の方が全然ストレスがない。
明日香さん:そうそう、失敗しても自分たちの責任だし、カバーするのも自分たちなので。
聖司さん:それに、会社の社長って理不尽なこと言うてくる人もいるじゃないですか。社長からこうした方って言われても、いや絶対こっちの方がいいって思ってる自分がいるから、自分はそこが曲げられないんですよ。それは絶対間違ってるって言っちゃう。
明日香さん:だから、すぐ喧嘩してお店を辞めちゃうんですよ(笑)
聖司さん:そうやって言うんやったら俺ももうええ、ここにいたくないって。辞める辞めるって、今までやめてきました(笑)今は誰かのせいにならない、全部自分のせい。それが楽。
飲食のお仕事を選んできた理由。
―――今のお話を聞いていると、聖司さんは老舗で3年間修行していたのすごいですね!
聖司さん:そこが40年くらい続く70代の社長が経営している老舗で、本当に料理のイロハを全部教えてもらいました。誰よりも早く行って誰よりも遅く帰って、毎日泣かされてましたね。包丁を全部研いだりとか。最後は、そこで学べるものは学んだなって、満足して辞めました。
明日香さん:よくやってたなと思いますよ。私もすぐ辞めちゃうって思ってました。
聖司さん:うん、よくやってたよな。今では考えられへん(笑)
―――俳優を目指されていたのに、飲食の道に絞ったのは?
聖司さん:俳優をやりながら最初は飲食店で働いていたんだけど、飲食の仕事が楽しくなっちゃって、オーディションとかを受けなくなって、気付いたら飲食一本になってました。
お客さんと喋るのも好きなんですけど、作る方に専念したくなって、料理の方をメインにしていきましたね。
―――明日香さんは自主退学ってすごいですね・・・!
明日香さん:大学のときにやっていた飲食店でのアルバイトが楽しくて、はまっちゃったんです。これからも飲食の仕事をしていくって決めたら止まらなくて、大学に行っている時間がもったいないって思っちゃったんですよね(笑)
その後は、誰も知らない所で自分を試したいと都内のお店で武者修行をして、その後自分のルーツにもなるタイ料理屋さんで働いてって感じですね。私は、接客や数字面とか、お客さんに関わるところをメインにずっとやってきました。
―――飲食のお仕事のどのあたりが好きなんですか?
明日香さん:レスポンスが早いというか、自分がお客さんにしたことがすぐ目の前で返ってきたり、喜んでもらったりとか、そのあたりですね。
―――お仕事を辞めたいって思ったことはありますか?
聖司さん:ない!飲食しかできないから。辞めたいと思ったとしても何しよかな、なんもできひんわって。
明日香さん:私もそうですね。ただ、24、5歳くらいのときに、飲食の仕事を本当にやめようと思って、さまよったことがあって。OLみたいな事務の仕事をやってみたりとか、ブライダルの仕事をしたくてレストランブライダルに就職したりしたんだけど、結局飲食やってたからって、レストランの方に回されちゃったんですよね。
聖司さん:結局帰ってくる先は飲食だったって感じだよね。飲食の他にこれを続けよう、天職にしようっていうのがないから。
大切にしているのは、色んな人に美味しく食べてもらうこと。
―――特に料理のどのあたりにこだわってるとかありますか?
聖司さん:まず、自分が納得しないものは出さない。おすすめは?って聞かれるんですけど、全部です!って答えます(笑)
新メニューを開発する中で、やっぱり失敗もあるし、最初は全部おいしいってわけではないんです。改善を繰り返して、おいしくしていくというのが基本にありますね。
―――少しずつ味が変化しているんですね。
明日香さん:少し経つと、自分たちも飽きてくるんですよ。この味で本当にいいのかって。その感覚ってお客さんも一緒だと思うので、少しずつ変えていますね。
聖司さん:特にグリーンカレーは、季節の野菜を入れたり具材を思い切って変えたりしています。
―――新城に住んでいる方って年齢層が幅広いと思うんですけど、だからこそ気を付けてることってあるのでしょうか。
明日香さん:基本のベースを万人受けの味にしています。調味料はもちろんタイから仕入れているので味は本格的なんですけど、辛さは少し優しめにして、あとは好みで調整してもらうようにしています。
例えば、高級な老舗のフレンチレストランとかだと、シェフが決めたこの味しか出さないっていうこともあって、もちろんそれもお店の個性のひとつだと思うんですけど、私たちのお客さんは地元の方々ですし、幅広い年齢層の方に美味しく食べていただくことを一番大切にしていますね。
旦那が今まで色々な料理をつくってきたからこそ、柔軟につくれる、というのもあると思います。
―――実際に幅広い年代のお客さんがいらっしゃっていますか?
明日香さん:そうですね、ただ、その時々多い年齢層とかはあって、オープン当初は30、40代の奥さんが多かったんです。最近はバブル時代にタイに旅行したことのあるような高齢の方とか、外国人の方も増えてきましたね。
あと、コロナになってからテイクアウトで気軽に買えるようになったので、新しい層のお客さんが増えました。
―――これからの構想とかあれば教えてください!
聖司さん:この状況で大きな目標がなかなか見えずではあるのですが、まず直近はタイ雑貨をもっと置きたいと思っています。こういうシャツ(写真でおふたりが着ているティシャツ)とかをつくろうかなって。子ども用のも置いて、その服を着てお店に来てくれたらうれしいじゃないですか。
―――タイからはぶれないんですね。
明日香さん:ぶらしたくないらしいんですよ。料理の引き出しがいっぱいあるから、もうちょっと違うものを出してもいいのかなって思ったりするんですけど。この2年間は、まずタイ料理屋としてのお店と顔を広める根張りの時期だったんです。なので、ちょうどこれからの方向性を色々と考えているところですね。
あと、今はなかなか人が集まりにくいですが、何かしらのイベントを復活させたくて。お店単位ではもちろん、こんなときだからこそ町を盛り上げられるイベントを開催するために、安心安全にできるやり方などを考え中です。
編集後記
特に印象的だったのは、ご夫婦でお店をやられていることや、独立することって、大変なのでは・・・?と思いながらお話をお伺いして、「むしろ喧嘩が減った!」「自分たちでやったほうが楽!」という回答から感じられた潔さ。他のお話を聞いていても、おふたりが大切にしていることや考えられていることにズレがないというか、息がぴったりなんです。
あと、私にはおふたりにとっての飲食のお仕事のように「これだ!」というものがないので、覚悟と決意を持って働かれているのをうらやましく感じました。早く見つけたいなー。
Instagramには、古賀家の日常がのぞけるお子さまの写真やキャンペーンの情報なども載っています。ぜひチェックしてみてくださいね。
【営業時間】11:00〜20:00
【定休日】火曜日
【住所】211-0044 神奈川県川崎市中原区新城1丁目10−14 鶴田第一ビル 101
【アクセス】武蔵新城駅から南口を出て徒歩3分くらい
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文:とやまゆか/写真:木戸真理子